【ジンギスカンバケツ】遠野に伝わるバケツの歴史とメリット、ラム肉の調理方法まで

「ジンギスカンバケツとは?」「どんなバケツなの?」そんな風に思っている人が多いかもしれません。岩手県以外に住んでいる人には、聞き慣れないキーワードですよね。そこで今回は、遠野ジンギスカンの「ジンギスカンバケツ」について深掘りしました。ジンギスカンのはじまりやメリット、使いかたも紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

【ジンギスカンバケツ】遠野に伝わるバケツとは?

「ジンギスカンバケツ」とは、ジンギスカンに使う岩手県遠野市発祥の調理器具です。遠野ジンギスカンに欠かせないアイテムで、バケツに鉄鍋を乗せてジンギスカンを楽しみます。遠野市では約50年も前から伝わる、遠野ジンギスカン定番のスタイルです。

ジンギスカンバケツはブリキでできており、シンプルな形状です。側面に空気を循環させるための穴が開いており、固形燃料を入れて使います。固形燃料を使うメリットは、火起こしの手間がないことです。手軽に着火できて、後片付けも簡単。軽量で持ち運びしやすいため、お花見など季節のレジャーに大活躍します。

【ジンギスカンバケツ】考案したのは当店2代目!

ジンギスカンバケツを考案したのは『ジンギスカンのあんべ』の2代目である安部好雄です。昔から遠野では祭りなどイベントが盛んに行われ、あんべでは「肉+タレ+鍋+七輪」のジンギスカンセットの貸し出しを行っていました。

ただ、2代目が店主だった当時は、道路の舗装がままならない時代です。四方を山に囲まれた遠野では山道も多く、自動車がなんとか通行できるような悪路ばかり。珪藻土から作られる七輪は衝撃に弱く、ジンギスカンセットの配達途中で破損することが多かったといいます。

2代目は「解決する方法はないか」と試行錯誤を重ね、考案されたのがジンギスカンバケツです。ブリキのバケツに吸気口の穴を開け、固形燃料を入れて使うことを思いついた安部は「バケツ+ジンギスカン鍋」を無料で貸し出すサービスを開始。手軽さが話題となり、ジンギスカンバケツはすぐに遠野市内に広まりました。

今では北海道と一二を争うジンギスカン王国の遠野。その裏側には「もっと気軽にジンギスカンを楽しんでもらいたい」という安部の想いがありました。

【ジンギスカンバケツは遠野市民のマストアイテム】

すっかり定番となったジンギスカンバケツは、遠野市民のマストアイテムです。ホームセンターや金物店で販売され、ほとんどの家庭が1つ以上のバケツを備えています。

ジンギスカンバケツは、1年を通して活躍します。例えばお花見や川遊び、芋煮会など、遠野の野外イベントではジンギスカンを楽しむのが定番です。

スーパーでは当たり前のようにラム肉が販売され、ジンギスカンは遠野市民にとって身近な料理の1つになっています。

【ジンギスカンバケツ】遠野ジンギスカンのはじまり

遠野ジンギスカンの歴史は、あんべの初代『安部梅吉』からはじまりました。初代は太平洋戦争で従軍中に満州へ渡り、そこで羊肉料理を口にします。当時の日本に羊肉を食べる習慣はほとんどなく、初めての美味しさに初代は感動。帰国後も羊肉の美味しさが忘れられず、精肉店兼食堂を開業しました。

ただ、開業当時から羊肉料理を提供していたわけではありません。はじめは家族で賄いとして楽しんでいましたが、ある時客人にジンギスカンを振る舞ったところ「美味しい」と大喜び。その姿を見た初代は「もっと多くの人にジンギスカンを楽しんでもらいたい」と考え、ジンギスカンの提供を開始しました。

とはいえ昭和30年頃はまだ、肉食の文化が始まったばかりの時代です。豚肉や牛肉を食べる習慣は広まりつつありましたが「羊肉を食べる」感覚はありません。初代は羊肉が食べやすいように試行錯誤し、羊肉料理と相性のいいタレを開発。タレの美味しさが話題となり、あんべには長い行列ができるようになりました。

【ジンギスカンバケツ】ラム肉の正しい調理方法

ジンギスカンバケツは、あんべの公式ホームページやネット通販サイトなどで購入できます。正しい調理方法を紹介するので、家族のレジャーの参考にしてください。

準備するもの

  • ジンギスカンバケツ
  • ジンギスカン鍋
  • 固形燃料

ジンギスカンバケツと鍋は、サイズを合わせて選びましょう。バケツに鍋がしっかりハマる必要があります。不安な人は、セット販売されているバケツと鍋を選ぶと安心です。

調理方法

  1. ジンギスカンバケツに固形燃料を入れて着火します。
  2. バケツにジンギスカン鍋を乗せます。
  3. 鍋があたたまってきたら、脂を全体にのばします。
  4. 鍋が十分な温度になったら縁で野菜を焼き、中央部分でラム肉を焼きます。
  5. 焼けたラム肉はジンギスカンのタレにつけて食べましょう。

ラム肉を鍋にのせたら、片面がしっかり焼けるまで我慢しましょう。すぐに返そうとすると、鍋に肉がくっつきます。返したあとは、あまり時間をおきません。色が変わった程度のタイミングが、柔らかくてジューシーなラム肉が楽しめます。

ラム肉は、牛肉と同様に半生でも楽しめる肉です。焼きすぎると硬くなるので、注意しましょう。

【ジンギスカンバケツ】4つのメリット

ジンギスカンバケツのメリットを4つ紹介します。

  1. 持ち運びしやすい
    • ジンギスカンバケツのメリットは、持ち運びしやすいことです。軽量なのに丈夫で、車に積載しても邪魔になりません。
  2. 火おこしの手間がない
    • ジンギスカンバケツを使えば、火おこしの手間がありません。バケツに固形燃料をセットしたら、着火して鍋を乗せるだけです。バーベキューのように炭を準備したり、知識がなくても簡単に楽しめます。
    • 一般的なバーベキューは、木炭と着火剤を使います。木炭の配置などに工夫が必要で、多少の知識が必要です。木炭が古かったり、湿っていると着火しない可能性もあります。
  3. 片付けの負担がない
    • ジンギスカンバケツなら、片付けの負担がありません。固形燃料の消火は、裏返したフタを乗せるだけで完了します。繰り返し使えて、長期保存ができるので、また次の機会に残しておきましょう。
    • 一方で炭火バーベキューの片付けは、少し厄介です。木炭は燃えるゴミとして捨てることができますが、しっかり消火する必要があります。消火方法は水に入れて消す、燃え尽きるまで待つ、火消し壺を使うなどです。消化方法や処理を誤ると火傷や火災のリスクがあるので注意してください。
  4. 家族や友人との時間を楽しめる
    • ジンギスカンバケツは、時間を有意義に使えるのもメリットです。美味しいラム肉を食べながらお酒を飲んだり、レジャーを楽しんだり。準備や片付けに手間がかからないため、家族や友人とゆっくり会話を楽しめます。

【ジンギスカンバケツ】注意点3選

ジンギスカンバケツを使うときは、次の3つに注意しましょう。

  • 鍋とバケツのサイズを合わせる
    • ジンギスカンバケツと鍋は、サイズが合うか確認して購入しましょう。サイズが合わないものを一緒に使うと、安定性がなくグラグラします。不安な人は、バケツと鍋のセットを購入すると安心です。
  • ジンギスカンバケツは屋外で使う
    • ジンギスカンバケツは、必ず屋外で使いましょう。室内やテント内で使うと、煙やニオイがこもります。材料によっては刺激臭が発生するので、注意してください。
    • ジンギスカンを室内で楽しむ場合は、バケツではなくカセットコンロを利用しましょう。
  • 固形燃料の取扱い
    • 火おこしの手間がなく使いやすい固形燃料ですが、取り扱いには注意が必要です。固形燃料に使われるメタノールは有毒なので、素手で触れないようにしましょう。
    • ジンギスカンバケツに使用する場合は、缶タイプの固形燃料がおすすめです。途中で火を消して、燃料がなくなるまで繰り返し使えます。

まとめ

岩手県遠野市では、ジンギスカンバケツを使ったジンギスカンが定番です。「焼き肉にしよう!」は「ジンギスカンにしよう!」の合図。お花見や祭りといった、地域のイベントで楽しまれています。

ただ、ジンギスカンバケツを利用する場合は、いくつかの注意点があります。バケツと鍋のサイズを合わせる、ジンギスカンバケツは屋外で利用するなど、ルールを守って楽しみましょう。