ジンギスカンが盛んな地域が気になる!遠野や北海道の特徴や違いを紹介

「ジンギスカン=北海道」と思っているなら、残念ながら間違いです。実は遠野や山形、長野など、ジンギスカンが盛んな地域は全国にあります。そこで今回は、ジンギスカン文化が根付く5つの地域を調査しました。それぞれ味付けや調理方法も詳しく紹介するので、あなた好みのジンギスカンを探してみてくださいね。

ジンギスカンが盛んな地域といえば遠野!

ジンギスカンが盛んな地域といえば、岩手県遠野市です。遠野市のジンギスカンの歴史は当店『じんぎすかん あんべ』から始まりました。

当店の初代『安部梅吉』は、従軍中に満州へ渡ります。そこで初めて羊肉料理を食べ、独特の味に感動。帰国後も美味しさが忘れられず、精肉店兼食堂を開業しました。

ただ、開店当初よりジンギスカンを提供していたわけではありません。当時の日本に羊肉を食べる習慣はほとんどなく、なかなか受け入れてもらえなかったそうです。

転機となったのは、賄いで食べていたジンギスカンを客人に振る舞ったこと。ジンギスカンを食べて喜ぶ客人を見て「もっと多くの人たちにジンギスカンを楽しんでもらいたい」と決意します。

まず初代は、試行錯誤しながら自家製タレを開発しました。羊肉と相性のいい自家製タレの評判は徐々に広まり、あんべは連日の大行列。今では「焼肉=羊肉」と言われるほど、ジンギスカンは遠野の名物になりました。

ジンギスカンが盛んな地域の異なる特徴

遠野に限らず、全国各地にジンギスカンの盛んな地域があります。各地域で受け継がれてきた異なる特徴を見ていきましょう。

【岩手県遠野市】

岩手県遠野市のジンギスカンの特徴は、屋外で「バケツ」を使って食べることです。ジンギスカン専用の通称「ジンギスカンバケツ」は、当店の2代目が開発しました。

ジンギスカンバケツとは、鍋と組み合わせて使うブリキのバケツです。バケツに吸気口となる穴を開け、ジンギスカン鍋と組み合わせて使います。

それまで屋外のジンギスカンは「七輪」を使うのが一般的でしたが、珪藻土から作られる七輪は衝撃に弱く壊れやすい。「ジンギスカンセット」を配達する機会が多かったあんべも悩み、考案したのがジンギスカンバケツでした。

さっそく店頭で鍋とバケツを貸し出す無料サービスを始めてみたところ、瞬く間に遠野中の話題に。「スーパーや精肉店で鍋とバケツが借りれる」独自のスタイルは、今では遠野ジンギスカンの常識になっています。

【北海道】

北海道のジンギスカンの特徴は、肉を焼いてからタレに付ける「札幌式」と、タレに漬け込んだ肉を焼く「滝川式」の2種類が共存していることです。北海道の郷土料理として愛されているジンギスカンですが、食べかたはエリアによって異なります。

北海道にジンギスカンが広まったのは、滝川式の食べかたが登場してからと言われています。滝川式の元祖は『松尾ジンギスカン』です。

松尾ジンギスカンは「臭みのない、誰もが美味しいと思える味付け肉を作りたい」と考え、タレの開発に取り組みました。「生ニンニクは使わない」を信念に研究を重ね、十年かけて開発されたのが「生タレ」。果実と野菜に、秘伝の香辛料を加えた生タレのジンギスカンが、今も変わらず愛される北海道の味です。

【長野県】

長野県のジンギスカンは、醤油ベースのタレが特徴です。リンゴなどのフルーツやスパイスを使ったタレは、この地域ならではの味わい。「ジンギスカン街道」と呼ばれる道沿いに多くの専門店が並ぶ長野市信州新町ですが、それぞれの店に秘伝のタレがあります。

また道具にこだわらないのも、長野の特徴です、他の地域ではドーム型の鉄鍋が広く使われていますが、長野では焼き肉のように平らな鉄板で楽しみます。もちろん店舗によってはジンギスカン鍋が登場しますが「何で焼くか」は気にしないのが長野県流。市販の味付け羊肉を購入して、ホットプレートで楽しむ家庭も多いです。

さらに飯田市周辺は「遠山ジンギス」が盛んな地域です。スーパーの食肉コーナーには「ブタジン(豚のジンギスカン)」「トリジン(鶏のジンギスカン)」をはじめ、猪肉や鹿肉が並び、ふるさとの味として親しまれています。

【山形県】

山形県蔵王温泉エリアで食べられるジンギスカンの特徴は「厚切りのラム肉」です。ジンギスカン用の羊肉は通常2mm程度にカットされますが、蔵王温泉エリアは5~10mm程度が一般的です。厚みがあるため外はこんがり、内側は柔らかい食感が楽しめます

また、店によってはジンギスカンに「こんにゃく」を入れます。名物の「玉こんにゃく」でも知られる山形県は「こんにゃく消費量日本一」。薄く短冊切りにした板こんにゃくを、肉や野菜と一緒に焼いて楽しみます。羊肉の脂と焼き目が絡んだこんにゃくは、山形でしか食べられない味です。

【東京都】

ジンギスカンの食べ比べができるのは「東京ならでは」です。東京には、個性豊かなジンギスカン専門店がたくさんあります。全国の名店が出店しているケースもあるので、異なる具材や個性的な味付けを楽しめます。

例えば北海道の名店「松尾ジンギスカン」は銀座に店舗を構えています。滝川本店の親しみやすい雰囲気とは異なる高級感が特徴です。

そのほか「国産羊の炙りユッケ」「羊のカレー」など個性的なメニューも楽しめる『羊SUNRIZE』、タレではなく唐辛子やクミンなどのスパイスをつけて食べる『ジュフク ロウ』、野菜のラインナップが豊富な人気店『だるまや西新宿店』など。

岩手県遠野市や北海道にも劣らない、個性豊かなジンギスカンが楽しめます。

遠野ジンギスカンのバケツとは

遠野ジンギスカンに欠かせないアイテムといえば「ジンギスカンバケツ」です。あまり知られていない使いかたやメリットを紹介します。

準備するもの

  • ジンギスカン用バケツ
  • ジンギスカン鍋
  • 固形燃料

調理手順

  1. ジンギスカンバケツに固形燃料を入れて着火します。
  2. バケツにジンギスカン鍋を乗せます。
  3. 鍋が十分な温度になったら中央の盛り上がった部分で肉を焼き、周りで野菜を焼きます。

メリット

  • 持ち運びしやすい
    • ブリキ製のジンギスカンバケツは、持ち運びしやすいのもメリットです。軽量なのに丈夫で長持ち。車に積載しても邪魔になりにくいため、どこでも簡単にジンギスカンが楽しめます。
  • 準備が簡単
    • ジンギスカンバケツのメリットは、準備が簡単なことです。バケツに固形燃料をセットし着火したら、あとは鍋を乗せて焼くだけ。火おこしの手間や特別な知識は必要なく、初心者でも簡単に楽しめます。固形燃料がない場合は、練炭で代用も可能です。
    • 反対に一般的なバーベキューは、着火剤と木炭を使います。火が回るように木炭を配置したり、風邪を送って火を大きくしたり、意外と工程が多いです。木炭が古かったり、湿っていると火がつかない可能性もあります。
  • 片付けも楽
    • ジンギスカンバケツは、食後の片付けが楽な点もメリットです。固形燃料は、裏返したフタを乗せるだけで消火できます。長期保存ができて、繰り返し使えるものが多いので、また次の機会に残しておきましょう。
    • 一方で木炭の消化方法は、少し厄介です。早急に消火したいときは「火消し壺」などを使ったり、炭を水につけます。自然な消火を待つのも方法ですが、完全に消えるまで時間がかかります。

まとめ

ジンギスカンが盛んな地域は岩手県遠野市をはじめ、全国各地にあります。ジンギスカンが広まった理由や時代背景は似ていますが、まったく同じはありません。食べ継がれるなかで築かれたタレや味付け、調理方法など、それぞれ特徴は異なります。各地域を訪れる機会があれば、食べ比べてみると新しい発見があるかもしれませんね。