マトンは何肉?羊肉の中でのマトンの位置づけと、他の区分との違いを整理

「マトン」という言葉を見かけたとき、「これは何の肉なんだろう?」と疑問を持つ方は少なくありません。ジンギスカンのメニューや焼肉店の品書きなどで目にする機会はあっても、正確な意味を把握しないまま過ぎてしまうことも多い言葉です。

この記事では、「マトンは何肉か」という基本的な疑問を出発点に、マトンが羊肉の中でどのように位置づけられるのか、ラムやホゲットとはどう違うのか、そして味や食感にどのような特徴があるのかを、食肉専門店の視点から整理してお伝えします。

マトンは「羊」の肉です

まず結論から言えば、マトンは羊の肉です。英語では「mutton」と表記し、もともとは食用の羊肉全般を指す言葉として使われていた時代もありましたが、現在の食肉業界では月齢(生まれてからの経過月数)によって区別された羊肉の種別を指す言葉として定着しています。

つまり「マトンは何肉か」と問われれば、答えは「羊肉」です。ただし、羊肉であればすべてマトンと呼べるわけではありません。羊肉はその月齢によって名称が分けられており、マトンはその中の一区分です。

羊肉は月齢によって3つに区分される

羊肉は一般的に、と畜時の月齢をもとに以下の3つに分類されます。それぞれ名称が異なり、味や食感にも違いがあります。

  • ラム(lamb):生後12か月未満の羊の肉
  • ホゲット(hogget):生後12か月以上24か月未満の羊の肉
  • マトン(mutton):生後24か月以上の羊の肉

この月齢区分は国や流通基準によって多少の幅がありますが、上記が広く使われている目安です。日本国内の食肉流通においても、この3区分を基準に表示・取り扱いがなされているケースが一般的です。

マトンは「成熟した羊」の肉

マトンは生後24か月以上、つまり2歳以上の成熟した羊から得られる肉です。羊は成長するにつれて筋肉量が増し、脂質の組成や筋繊維の密度も変化します。その結果、マトンはラムと比べて肉質がしっかりとしており、独特の風味(いわゆる羊臭さ)が強くなるという特徴を持ちます。

この風味は好みが分かれるところですが、羊肉の味わいを求めるファンの間では「マトンならではのコク」として評価されています。カレーや煮込み料理など、スパイスや調味料と合わせる調理法では、マトンのしっかりした風味が料理の深みを引き出すとされています。

マトン・ラム・ホゲットの違いを比較する

3つの区分を比較すると、それぞれに明確な違いがあります。

ラムの特徴

ラムは生後12か月未満と若いため、肉質が柔らかく、羊特有の臭みが少ないのが特徴です。脂の融点が低く、口の中でとろけるような食感が得られやすいことから、日本国内ではジンギスカンや焼肉での需要が高く、羊肉の中でも流通量の多い区分です。

ホゲットの特徴

ホゲットはラムとマトンの中間にあたります。月齢が進んだ分だけラムよりも風味がやや強くなりますが、マトンほどの主張はありません。日本国内での流通量は少なく、ラムかマトンの二択で語られることが多いですが、欧州の食文化では一定の需要があります。

マトンの特徴

マトンは羊肉の風味が最も強く出る区分です。肉の繊維がしっかりとしており、噛み応えがあるのが特徴です。一方で、脂質の中にはオレイン酸をはじめとする不飽和脂肪酸が含まれており、栄養面での特性はラムと大きく変わりません。調理の際は、スパイスやハーブ、みそなどとの相性がよく、風味を活かした料理に向いています。

ジンギスカンで使われる肉との関係

岩手県遠野市などでジンギスカンが親しまれている地域では、使用する肉の種別が店によって異なります。ラムを使う店、マトンを使う店、あるいは両方を提供する店など、選択肢はさまざまです。

当店「じんぎすかん あんべ」では、肉の特性を活かした提供を行っています。ラムは素材の柔らかさと淡白な風味を楽しむのに適しており、マトンは羊肉らしい力強い味わいを堪能したい方に向いています。どちらが優れているというわけではなく、食べる目的や好みに合わせて選ぶことが大切です。

なお、「マトン=臭みが強くて食べにくい」というイメージを持つ方もいますが、そもそも鮮度の高い肉を仕入れるの重要であることと、適切な処理や調理法を施すことで、臭みはかなり抑えられます。新鮮な状態で仕入れ、丁寧に扱われたマトンは、独特の風味がかえって料理の個性となります。

マトンを選ぶ際に確認したいこと

マトンを購入・注文する際には、以下の点を確認しておくと選びやすくなります。

  • 月齢表示の有無:「マトン」と表示されていても、生産国や流通経路によって月齢の基準が異なる場合があります。
  • 産地の確認:オーストラリア産やニュージーランド産が日本国内では多く流通しており、産地による風味の差もあります。
  • 冷凍・冷蔵の区別:冷凍品と冷蔵(チルド)品では、解凍後の食感や風味に違いが出ることがあります。
  • 部位の確認:マトンも部位によって食感や脂の量が異なります。ロース・肩・もも・バラなど、用途に合った部位を選ぶことが大切です。

まとめ:マトンは「成熟した羊の肉」という理解が出発点

「マトンは何肉か」という問いへの答えは、「生後24か月以上の成熟した羊から得られる肉」です。羊肉全体をラム・ホゲット・マトンという月齢区分で捉えると、それぞれの特徴が明確になり、どの場面でどの肉を選ぶべきかが見えてきます。

マトンは風味が強く、調理の幅も広い肉です。「臭みが強い」というイメージだけで敬遠するのはもったいなく、素材の個性として向き合うことで、羊肉の新たな魅力に気づく入口になります。岩手・遠野で羊肉文化に長く携わってきた食肉専門店として、マトンをはじめとする羊肉の正確な知識を広めていきたいと考えています。

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