2026年6月12日 ジンギスカンは何の肉?羊肉が使われる理由・部位・産地の違いを食肉専門店が体系的に解説

「ジンギスカンって何の肉を使うの?」という疑問は、実はとても奥が深い問いかけです。一口に「羊肉」と答えることはできますが、月齢・部位・産地・加工方法によって、テーブルに並ぶ肉の性質はまったく異なります。岩手県遠野市で食肉専門店を営む立場から、この問いを「種類」「部位」「産地」という三つの軸で整理してお伝えします。
ジンギスカンに使われる肉の「種類」:ラムとマトンの位置づけ
ジンギスカンに使われる羊肉は、大きくラムとマトンの2種類に分けられます。この分類は「種類の違い」ではなく、と畜時の月齢による区分です。
ラム:生後12か月未満の羊肉
ラムは生後12か月未満の若い羊からとれる肉です。筋繊維が細く、脂肪の融点が低いため、火が入ると素早く柔らかくなります。独特の羊臭(ラム臭)が比較的少なく、食べやすさから初めてジンギスカンを食べる方にも選ばれやすい素材です。現在、日本のジンギスカン市場ではラムが主流を占めています。
マトン:生後2年以上の羊肉
マトンは生後2年以上の成熟した羊の肉です。ラムに比べて肉の色が濃く、脂肪が硬め。独特の風味(マトン臭)が強い分、羊肉本来のコクを楽しめます。濃厚なたれや長時間の漬け込みと相性がよく、ジンギスカンの中でも「本格的な味を楽しみたい」という方に根強い人気があります。
なお、生後12か月以上2年未満の羊は「ホゲット」と呼ばれ、ラムとマトンの中間的な特性を持ちます。国内流通量は少ないものの、ラムのやわらかさとマトンの風味を両立した素材として知られています。
ジンギスカンに使われる肉の「部位」:どこの部位が向いているか
同じ羊肉でも、どの部位を使うかによって食感・風味・適した焼き方が変わります。ジンギスカンでよく使われる部位を整理します。
肩ロース(ショルダー)
ジンギスカン用として最も流通量が多い部位です。適度な霜降りと赤身のバランスがよく、薄切りにしたときの歩留まりも高い。焼いたときに肉汁が出やすく、たれとの馴染みが良好です。スーパーや専門店で「ジンギスカン用」と表示された肉の多くは、この肩ロースが使われています。
もも肉
赤身の割合が高く、脂肪が少ない部位です。あっさりとした食感で、カロリーを抑えたい方や赤身の風味を楽しみたい方に向いています。ただし、焼きすぎると硬くなりやすいため、短時間で仕上げることがポイントです。
背ロース(ラック・ロインなど)
きめ細かい肉質と上品な脂が特徴の高級部位です。薄切りよりも厚切りや骨付きで提供されることが多く、ジンギスカンよりもステーキやグリルで使われるケースが多い。専門店では特別なメニューとして扱われることもあります。
バラ肉
脂肪が多く、濃厚なコクが出る部位です。焼くと脂が溶け出し、野菜に旨みが移ります。独特の風味が強いため、ジンギスカンに慣れた方向けという側面があります。
ジンギスカンに使われる肉の「産地」:国産・輸入の違い
羊肉の産地も、ジンギスカンの味わいを左右する重要な要素です。国内で流通している羊肉の産地は主に以下の通りです。
- オーストラリア産:国内市場で最も多く流通。牧草飼育が主流で、すっきりとした赤身と淡白な脂が特徴。冷凍・チルドの両方で輸入される。
- ニュージーランド産:広大な牧草地での放牧飼育が一般的。オーストラリア産と並んで安定供給されており、柔らかい肉質が評価されている。
- 国産(北海道など):流通量は輸入品より少ないが、鮮度の高いチルドや生肉として入手できるケースがある。草や飼料の種類によって風味が異なり、生産者ごとの個性が出やすい。
- モンゴル・アイスランドなど:専門店や輸入食材店で取り扱われることがある。それぞれ固有の飼育環境を持ち、産地特有の風味が楽しめる。
日本のジンギスカン文化は、オーストラリア・ニュージーランド産のラム肉を主な素材として発展してきた背景があります。そのため、家庭や飲食店で目にするジンギスカン用肉の多くは、これらの産地からの輸入品です。
「生ラム」と「味付きラム」:加工形態による分類も重要
ジンギスカン用の羊肉は、加工の形態でも大きく二つに分かれます。
生ラム(無味付け)
何も味付けしていない状態の肉。焼いた後に好みのたれをつけて食べる北海道スタイルや、塩・スパイスで食べるスタイルに向いています。肉本来の味や香りをダイレクトに楽しめる点が特徴です。
味付きラム(漬け込みタイプ)
醤油・にんにく・りんごなどを合わせたたれに事前に漬け込んだ肉。焼くだけで食べられる手軽さが特徴で、たれが肉に染み込んでいるため焦げやすい点に注意が必要です。東北地方を含む一部地域では、この漬け込みスタイルが古くから親しまれています。
まとめ:「何の肉か」を多角的に理解することがジンギスカン選びの第一歩
ジンギスカンに使われる肉を整理すると、月齢(ラム・マトン)・部位(肩ロース・もも・バラなど)・産地(オーストラリア・ニュージーランド・国産など)・加工形態(生・味付き)という四つの軸があることがわかります。
「ジンギスカンは羊肉」という事実の裏には、これだけ多様な選択肢が存在します。どの組み合わせを選ぶかによって、テーブルに並ぶ味はまったく異なるものになります。岩手県遠野市の「じんぎすかん あんべ」では、素材の特性を踏まえた上でジンギスカン用の肉をご用意しています。ご購入前にお気軽にご相談ください。
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